フロー体験とは?あなたが感じる不思議な楽しさの正体とその効果

フロー体験ってご存知ですか?

あなたにはこんな経験がありますか?
“好きなことや楽しいことに時間を忘れるほど取り組んだことがある”
“物事に取り組んでいたら、思ったより時間が経っていた”
こうした経験をしているのなら、あなたはフローを体験しているのかもしれません。

「フロー」は心理学者であるミハイ・チクセントミハイによって提唱された概念です。物事に取り組んでいることに完全に浸り、集中していて他のものが目に入らない精神状態になることを言います。

この状態を流れる水に例えて描写されたのがフローの由来です。フローは、物事に取り組んでいることが非常に楽しいので、純粋にそれをするために多くの時間やエネルギーを注ぎ込む状態です。

フローという状態になることが、最も望ましいことであり、フロー体験を増やすことが生活の質を向上させるとチクセントミハイは述べました。

フローの発見は「大人の遊び」調査から

フロー体験は、1968年に「大人の遊び」をテーマとして学生に調査を行い発見されたものです。このレポートは「遊びの性格をもつことに取り組んでいる時にこそ、楽しさを感じ有意義な体験をする」という仮説のもとでまとめられています。
調査では、フットボール、チェス、ディスコダンスなどさまざまな遊びが挙げられましたが、次の3点が共通点として見出されました。

  1. 「たくさんのエネルギーや時間を注ぐ活動をする際は活動の内容がハッキリしていて、目標が具体的かつ明確である」
  2. 「瞬間ごとに正しい動作をしたかが分かり、瞬間ごとの動作がその人に迅速なフィードバックを与える」
  3. 「チャレンジする活動に対して習得しているスキルが等しい」

具体例(ロッククライマーの場合)
ロッククライマーは動くたびに手足を運ぶ必要があることを知っている→下に落ちずに岩の上に立っている→フィードバックが得られる(=自分の動きが正しかったとわかる)

そして、①~③の条件下において、時間の経過を忘れるほど集中力が高まり、行動をコントロールできる感覚を得るということが分かりました。

フロー体験は古代からあった?

フロー体験は近年になって発見されたものですが、実は古代の文献にもフロー体験について記述されているのが発見されています。禅を習得している弓道の射手の文献には「的に狙いを定めるのではなく、弓、弦、的と一つになることで的に当てる事が出来る」とあります。つまり、極限まで集中している状態といえます。この他にも世界各地の文献にフロー体験に関しての記述が存在しており、太古の昔からフロー体験が存在していたと考えられます。

 

フロー体験≠自己啓発

フロー体験が起こるメカニズムは解明されておらず、1人1人違っています。自分自身で、フロー体験が起こる物事や状況を見つけていくことになります。

そのためには、自分のスキルを生かす物事や機会を発見し、取り組むことが大切です。
つまり、能動的に行動を起こすことが重要です。フ

ロー体験の考えでは、「行動すること」に重点を置いており、フロー体験により充実感や肯定感につながるという考えが基本になっています。自分を変える「方法」や「考え」に主眼を置く自己啓発とは異なった観点からの考え方であると言えます。

フロー体験のポイント!

  1. 適切な目標に向かう時に起こる
    フロー体験は、適切な反応を必要とする明確な目標に向き合う時に起こる傾向があるとされています。
    例 テニスの場合……目標(試合に勝つ)とルール(ラケットでボールを打つなど)があり、目標のために何をするべきかを疑いもなくプレーすること
    音楽家の場合……演奏したい曲選び、演奏するために目標のために何をするべきかを疑いもなく演奏すること
  2. すぐに適切なフィードバックを得られること
    すぐに適切なフィードバックを得ることも大切です。フィードバックを得ることで自分の行動の良し悪しを把握することが可能になります。
    例 テニスの場合……ワンプレーごとに自分のプレーが目標に近づいているか、遠ざかっているかを把握する→ フィードバックを得ることができる
    音楽家の場合……自分が演奏した音が楽譜と合致していたかどうかを聴く→フィードバックを得ることができる
  3. チャレンジとスキルのバランスがとれること
    フロー体験はチャレンジとスキルのバランスが大切です。チャレンジの難易度が高い時は心配し、徐々に不安に変わってきます。スキルが高すぎる場合は退屈を感じ、次第に無気力に陥ってしまいます。チャレンジとスキルが高いレベルで一致することで日常生活から離れたフロー体験が生まれます。
    例 テニスの場合……実力が同程度の人と勝敗を争って全力でプレーする時
    音楽家の場合……演奏者の最大限の技術を求められる楽曲を演奏する時

まとめ:フロー体験によって得られるもの

フロー体験の考え方は様々な場面で応用することができるでしょう。仕事や日常生活において明確な目標を設定し、迅速なフィードバックを受けられる環境を整えたり、チャレンジとスキルのバランス調整を行ったりすることで、フロー体験が生じる可能性が高まります。フロー体験によって仕事の効率が向上したり、日々の生活が楽しくなって生活の質が向上したりするなどの恩恵を受けることができるのではないでしょうか。フロー体験の原理をうまく利用して、生き生きとした生活を送ってみませんか?

 

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