【臨床心理学第1回】問題把握と対処法がカギ!臨床心理学における実践活動とは?

臨床心理学とは

わたしたちは誰でも、人間関係や将来のことなど、生きていく上で様々な悩みを抱えています。考えすぎてしまったり、悩みすぎたりしてしまうと知らず知らずのうちに心身に不調をきたすこともありますね。

臨床心理学」は、行動の原因を探求し問題の改善を目指すための学問です。

指定の大学や大学院で専門的に学び、臨床心理士という資格を取得し、スペシャリストとしてサポートを行う人もいます。ここでは、臨床心理学のエッセンスをご紹介していきます。あなた自身の悩み解決や、身近な対人関係や仕事での人間関係において、大きく役に立たせることが可能です。

臨床心理学とカウンセリングと心理療法の違い

臨床心理学は「カウンセリング」や「心理療法」と混合しやすい学問です。
一見すると似たもの同士のようにも思われますが、実は「別の学問」として扱われています。
それぞれどのような違いがあるのでしょうか?

臨床心理学は個人や社会の問題の改善を図る学問

臨床心理学」は個人や社会が抱える問題を様々な視点からとらえ、改善を図る学問です。専門的な知識や経験を生かしながらサポートをしていきます。

カウンセリング」は人に対する広い領域のサポートを目的としています。悩みを抱えている人(クライエントといいます)の内面的な成長を助けながら、共感的な面接を行っていきます。

一方「心理療法」は、独自の理論と技法の習得が前提とした実践活動が主となります。理論を順守しながら活動を行いクライエントの苦悩を和らげることをねらいとしています。

それぞれの学問の目的・介入方法・所属・特徴

臨床心理学
目的:様々な問題の解決
介入方法:心理的介入技法を用いる
所属:心理学部
特徴:社会と大きく関わる。個人、学校、企業など

カウンセリング
目的:比較的苦悩が少ないクライエントの内面的な成長を助ける
介入方法:共感的な面接
所属:教育学部
特徴:専門性よりカウンセリングの人間性が重視される

心理療法
目的:苦悩を和らげ、人格の変化を良い方へ促す
介入方法:理論順守しながら、クライエントとの結びつきを重視
所属:私的な研究機関
特徴:学派により理論や実践の仕方が異なる

この3学問で共通することはクライエントとの関係性を重視しながら問題解決することですが、学問としての扱いは上記の説明のように異なります。

臨床心理学の活動は実践活動・研究活動・専門活動の3つが存在する。
一般的に想像されるのは実践活動

①実践活動

クライアントに対して、臨床心理学に沿った心理的なサポートをしていく活動となります。一般的に想像されるような医者と患者の関係は実践活動を指します。

まず、クライエントと話をして「何に悩まされているのか」「生活上どんな支障をきたしているのか」など、様々な視点から何が問題なのかを探ります。
現状を把握し、問題を洗い出すこの作業はアセスメント(査定)と呼ばれ、臨床心理学でも非常に重要なステップです。
問題がAなのに、Bに対してのアプローチをしてもお門違いですよね。問題が何かを把握するために慎重に進める必要があります。
v2へのリンク

次にアセスメントで導き出した問題に対して、解決のために働きかけることを介入といいます。
問題をきちんととらえた上で、解決にむけて具体的なサポートを行っていきます。

このように【アセスメント】現状を把握し問題を特定し、【介入】問題に対して解決に向けた働きかけ・サポートをすることが実践活動の大きな流れとなっております。

②研究活動

実践活動が有効かどうかを検証する活動です。いくら実践活動を行っても成果がでなければ問題は解決されませんし、有効でない活動を行っていては意味がありません。
そのため、実践活動が有効かどうかを科学的に研究する活動も必要となります。

③専門活動

臨床心理学のスペシャリストを育てるための教育システムの確立や、臨床心理学が広く社会に認められるために行う活動です。
臨床心理学におけるスペシャリストは臨床心理士。受験資格は指定大学院を修了した者や臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者に与えられます。

日常生活に活かすことのできるのは実践活動

3つの活動を比べてみれば一目瞭然ですが、日常生活に活かすことのできる活動は実践活動です。
心理状態の現状を把握するためのアセスメントや介入の具体的なテクニックなど、日常に活かすことができるでしょう。

それに対して、研究活動・専門活動は一般的に研究者や教授などがする活動であり、一般人に活かせる内容とはいえません。
臨床心理の効能を証明するのは大変ですし、証明したからといって自分の人生には何一ついい影響はありません。

私達のような一般の人たちは、研究・専門活動で立証された効果のある臨床心理療法を学び、自分の合った形で活かすことで、自分の人生・心をより豊かにしていけることでしょう。

臨床心理学の実践活動の流れ

1⃣クライエントを知るために家族やクライエントに面接、観察、検査を実施

2⃣クライエントの抱えている問題を的確に見極める(アセスメント:査定)

3⃣収集した情報を分析し、問題のメカニズムについて仮説をたて、サポート方針を考える

4⃣問題の解決・改善するために働きかけを行う(介入)

問題の多くはさまざまな要因が複雑に絡み合っていて、一度の介入では解決されません。
4⃣→2⃣の流れを繰り返し、修正しながら結果をそのつど検証していきます。

このようにしてクライエントの抱えた問題の解決のためのサポートをしています。

臨床心理学の実践活動で求められる3つの力

1⃣コミュニケーション
ークライエントと信頼関係をつくる基本技能ー

実践活動は、クライエントとの信頼関係を前提に行われていきます。つまり、しっかりとした信頼関係を築いた上で問題解決を図っていくことが求められます。技能の要素としては

  • 共感的対話
  • アセスメント的対話
  • 介入的対話
  • 社会的対話

の4技能があります。

2⃣ケースマネジメント
ー実際に介入し、適切な実践活動を実践していく中核技能ー

この技能は直接クライエントの悩み解決に向けて実際に行動していく技能。実際に悩み解決に向けて行動を起こすのでこの中核技能が活動の中心になります。主な要素としては

  • アセスメント
  • 心理療法
  • ケース・フォーミュレーション
  • 危機介入
  • リファー
  • コンサルテーション

この6要素。介入していくことで問題を解決していきます。個人だけではなく、他専門家とも連携してコミュニティに介入する場合もあります。

3⃣システムオーガニゼーション
ー社会的な活動を通してスムーズに対応できるように環境を整える発展技能ー

他の専門機関などと連携していくことで、実践活動を社会的に組織化していきます。社会の中で実践活動をしていくためのコミュニケーション能力が求められます。主にこの技能の要素としては

  • 他職種とのコラボレーション
  • リーダーシップ
  • 組織の運営能力
  • 調整能力
  • 心理教育

この5要素。臨床的技術だけではなく、社会性が求められます。

「要素多すぎない・・・?難しくない・・・?」と思ったあなた、ご安心を。この3つの技能についての各要素についてはこれからわかりやすく説明していきますね!

今回取り上げた「臨床心理学においての実践活動」は核の部分で、アセスメントをし実際に介入していくもの。
初動活動におけるクライエントの「なぜ今の状況に陥ったのか」「どんな苦しみを抱えているのか」など、的確な問題把握と「今の状況を安定した状態に改善するため」の解決に向けてのサポートが重要です。

今回は実践活動における「アセスメントと介入の繰り返し、結果検証から最善策を見出す」というプロセスで、まずは的確な問題把握と対処法が必要であることを学んでいきました。

実生活でみられるちょっとした悩み事も、どんなことで悩んでいるのか正確に判断し、どんな解決策が適しているのか・・・何度も検証してみると今までとは違った解決策が見つかるかもしれませんね!

寺谷春のプロフィールはこちら    相談もお気軽にどうぞ。