REBTを学んで不健康な感情や行動をコントロールしよう

人生哲学感情心理療法(REBT)とは?

負の感情はコントロールできる

日常のネガティブな出来事で気持ちや行動もネガティブになってしまう。
程度の差こそあれ、誰にでも経験がある事ではないでしょうか?
ですが中にはちょっとした失敗でとても落ち込んでしまったり、ついカッとなって物を壊してしまったり、自分の感情を制御できなくて悩んでいる人もいると思います。
必ずしも怒りや不安、落ち込むこと等が悪い感情というわけではありませんが、過剰な負の感情はある程度制御できるようになりたいですよね。
人生哲学感情心理療法(REBT)はセラピストによって施されるカウンセリングの技法の1つですが、哲学的な要素が強いため、自身で学びながら実践することでも効果が期待できる自己啓発的な療法です。
アルバート・エリス(Albert Ellis)によって考案されたこの心理療法は、Rational Emotive Behavior Therapy(人生哲学感情心理療法)、略してREBTと呼びます。
直訳すると合理的感情行動療法となります。合理的な考え方を学ぶことによって感情や行動にいい影響を与える、ということです。

RT?REBT?検索すると論理療法とか出てきてよくわからない!

提唱された当初は論理療法(Rational Therapy)という名称でしたが、後に感情や行動といった要素も重視され、今のREBTという名称に変わっていきました。
ネットで検索すると両方出てきてしまいややこしいですが、論理療法はREBTの古い名称であって元は同じ療法という認識で大丈夫です。
他にも論理情動行動療法等いくつかの訳され方がありますが、REBTと書いてあれば基本的に同じものです。

具体的にどんな心理療法なのか?

REBTの目的は今現在抱えている感情及び行動の問題を解決し、人生を楽しく生き抜くことです。

REBTは古代ギリシアの哲学者であるエピクトーテスの「人は物事によって悩むのではなく、その受け取り方によって悩むのである」という考え方を基本理念としています。
つまり、起こってしまった出来事を変えるのではなく、その受け取り方を変えることによって、最終的には感情や行動を変えていこうという心理療法です。
そのための方法として、科学的・論理的な思考、楽しむ姿勢、決めつけをしない等、いくつかの考え方や価値観を、カウンセリングを通して学んでいくことになります。

REBTの核とも言える「ビリーフ」とは?

出来事に対する受け取り方・解釈のことを、REBTではビリーフ(Belief)と呼びます。
少し馴染みのない言葉かもしれませんが、Believe(信じる)の名詞形というと分かりやすいと思います。
ビリーフは信念、固定観念、自分が正しいと思っていること、という意味です。
このビリーフを改善していくことで健康的な感情や行動を取り戻すことができます。

ビリーフは以下の2種類に分けられます。

名称ラショナルビリーフイラショナル・ビリーフ
概要ポジティブな考え方ネガティブな考え方
事実基づいている基づいていない
論理論理的である論理的ではない
肯定/否定自己肯定的である自己否定的である

イラショナル・ビリーフ(非合理的信念)

  1. ネガティブな考えや思い込みのことです。
    多くの場合、論理的でない、また科学的根拠がないにもかかわらず~しなければならない、~すべきだ(must)という信念によって引き起こされます。
    例えば以下のようなものがあります。
    ・事実に基づいていない:「相手の意見に賛同しなければいじめられる」
    ・論理的でない:「こんな小さな会社でも不採用ならば、絶対一生就職なんてできない」
    ・自己否定的・悲観的:「1番になれないならば自分には価値がない」
    ・不幸な結果をもたらす:「嫌なことを我慢してでも周囲の期待に応えなければならない」
  2. ラショナル・ビリーフ(合理的信念)
    論理的でポジティブな考えや信念のことです。
    イラショナル・ビリーフを論理的に考えることでラショナル・ビリーフに変えていき、その結果として感情や行動をポジティブな方向に変えていくことがREBTの目的です。
    そのためには以下のような要素が求められます。
    ・事実に基づいている:「意見が合うに越したことはないが、人の考えはそれぞれなので意見が違っただけでいじめられるとは限らない」
    ・論理的である:「この会社に採用されなかったとしても、他の会社には採用されるかもしれないので諦める必要は無い」
    ・自己肯定的・楽観的:「1番になれなかったとしても努力するのは自分のためになる」
    ・幸福な結果をもたらす:「嫌なことは我慢せず誰かに相談したほうがよい」

REBTの流れを分かりやすくまとめたのがABC理論

イラショナル・ビリーフをラショナル・ビリーフに変えるためには論理的に物事を捉えることが必要です。
そのため、REBTの流れを分かりやすくまとめたABC理論というモデルに沿ってカウンセリングが進められていきます。
ABCD理論、ABCDE理論とも呼ばれますが、基本的に同じものです。

これがABC理論のモデルです。

これをカウンセリングの順序にあてはめると以下のような流れになります。
C(Consequence):結果
今現在どのような感情や行動等の結果が発生しているのかを尋ねます。
普通の病院でもまずどのような症状が出ているのか確認するのと同じことです。
複数の問題がある場合、その中から1つを話したい問題として選んでもらいます。

A(Activating event):出来事
次はどのような出来事(A)が起こったのかを尋ねます。
ここでは事実をしっかりと確認しておく必要があります。

B(Belief):ビリーフ
出来事(A)自体に問題があるから悪い結果(C)が発生しているのではなく、その受け取り方(B)によって悪い結果(C)が発生しているという考え方を教えます。
そして、イラショナル・ビリーフと結果(C)の関連性を確認します。

D(Dispute):論駁/介入
イラショナル・ビリーフが論理的でないことを示すために、新しくラショナル・ビリーフを提案します。
新しい知識や科学的・論理的なものの考え方、生き抜くこと・楽しむこと等ポジティブな価値観等を示すことで、クライエント自身がラショナル・ビリーフを得られるように話し合っていきます。
※ここでは提案という言葉を使っていますが、本来Disputeは論駁と訳されます。あまりなじみがない言葉であることを考慮して変更しています。

E(Effectiveness):自己啓発
Dによって与えられた影響のことを指します。

実際にはこれらを何度も行き来しながらセッションを進めていきます。

ABC理論に基づいた例
C:とても落ち込んでいる。

A:仕事で失敗してしまい多大な損害を出し、多くの人に迷惑をかけた。

B:「絶対に失敗してはならない」、「人に迷惑をかけてはならない」等のイラショナル・ビリーフを持っている場合、「自分には価値がない」と思い込み→Cへ。

D:「一度も失敗しない人間はいないし、今回の失敗を糧にして次に活かせばよい」、「人に迷惑をかけた分、自分が迷惑をかけられた時に頑張って助ければいい」、「どんな風にフォローされると助かるかが分かった」等の考え方によってBを論駁する。

E:Dで考えや知識を教えてもらったことで、徐々に失敗を次に活かすためにはどうすればいいかを考え始め(B)、徐々に落ち込んだ状態から回復してきた(C)。

まとめ

できごとに対して考え方を変えるということは、特にそのことで悩んでいる人にとっては容易なことではありません。
ですが、自身でも意識的に論理的な思考を行ってみたり、身近な人や職場、学校などで実践してみたりすることで、少しずつできごとを楽しむポジティブな心を育てることができるのではないかと思います。
REBTは実際に子どもや、健康な家庭生活・社会生活を送っている人の自己成長を促す心理教育としても利用されている技法です。
人生を楽しく生き抜くための方法論として生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

寺谷春のプロフィールはこちら    相談もお気軽にどうぞ。