コミットメントを正しく設計し、目標達成率を格段に上げる7つのコツ

コミットメントとは、約束・目標の達成/非達成時にアメ・罰を設定すること

みなさんは新年に目標を立てますか?
一昨年までの私は毎年立て、2月に入ったあたりには忘却の彼方となり、
振り返ることなく、達成することなく来年を迎え、懲りずにまた新年の目標を立てていました。

今回はそんな私が一年の目標のみならず、普段の目標設定を達成するためのコミットメントという考え方を紹介します。

目標を達成できない理由は、あなたの意志が弱いのではなく、目標の設定の仕方、コミットメントの設計方法を知らないだけなのです。

コミットメントとは、目標に対して達成したり達成できなかった時に、予め決めた契約に沿ってアメや罰を与えるというものです。
目標を達成した際に、予め決めた契約に沿ってアメを与えるものは、インセンティブと呼ばれています。

効果的にコミットメントを設計することで、リバウンドのないダイエットも可能となる

コミットメント契約が世界で始めて研究の遡上にあげたのは、イギリスのロバート・W・ジェフリーという医師が率いる研究チームでした。

ロバート博士は、太っている中年男性に連絡し、
「体重を14キロ落とす15週間のプログラムに参加しないか?」と持ちかけました。

体重の測定義務、アルコール摂取量の申告等々のルールが設けられましたが、最も変わったルールとして「ダイエットに失敗したら、罰金を支払う」というルールが課されました。

この罰金を払うという部分がコミットメントとなります。

実験では、罰金を300ドル、150ドル、30ドルに設定した3つのグループで遂行しました。
結果としては、300ドルの罰金のグループは平均14.5キロ痩せ、30ドルの罰金のグループは10.5キロ痩せました。短期的にはコミットメントを設定することによって、大きくダイエットを成功させたと言えるでしょう。

しかし、一年後に再度体重の調査を行なった際には、300ドル、30ドルの両グループが5キロ程度リバウンドをしてしまいました。ダイエットにリバウンドは付き物ですね。

一方、150ドルのコミットメントを設定したグループは、一年後さらに1.1キロも体重が減っていたのです

300ドルという過度なコミットメントは、継続性のない無理なダイエットを誘発させ、リバウンドをしてしまいます。
30ドルという緩いコミットメントは、ダイエット後の習慣とはならずにリバウンドをしてしまいます。
150ドルという適切なコミットメントは、継続性のある適切なダイエットの習慣を形作り、リバウンドをせずに体重が減り続けました。

つまり、コミットメントを適切に設計することで、目標を達成することが可能なのです。
コミットメントについてのイメージは湧きましたでしょうか?
ここでいうダイエットできなかったら、300ドル払うという部分が契約であり、コミットメントとなっているのですね。

コミットメント設計のコツ①アメとムチを使い分ける

前述した通り、コミットメントは目標に対してムチ・罰を与えるものです。
(ダイエット目標不達成時に罰金300ドルがまさにムチです)

子供の教育に関しても、多くの家庭ではアメと鞭を混ぜて目標設計をされている方々が多いと思います。

アメの例:中間テストで平均80点を取ったら(目標達成時)、テレビゲームソフトをご褒美に買ってあげる(アメ・ご褒美)
ムチの例:中間テストで平均70点を取れなかったら(目標不達成時)、テレビゲームを2ヶ月間取り上げる(ムチ・罰)

上記のように同じように子供の中間テストに対しても、インセンティブ・コミットメントの両面からアプローチすることが可能です。

多くの人達は、アメ戦略しか取らなかったり、ムチでしか人を動かさなかったり、一辺倒の戦略をとりがちです。

目標と現状を見極めて、それぞれに合った方法を選ぶと達成率は格段に上がります

コミットメント設計のコツ②損失忌避を理解しリフレーミングする

人は同じような利益と損失だと損失を課題評価します。

猿を例に取った実験では、片方のカゴでは無条件で1切れのりんごをあげており、
片方のかごでは、50%の確率で2切れのりんご、残りの50%の確率で何ももらえないというカゴを設定したとき、猿は間違いなく無条件で1切れのりんごを得られるカゴを選びます。

期待値としてはどちらのカゴも1切れのりんごがもらえますが、猿はりんごをもらえない機会損失を過大評価し(損失忌避の法則)、片方のカゴを選び続けるのですね。

逆にいうと損失(ムチ)をうまく利用することで、コミットメントの達成を助けることができるのです。

アメをムチにリフレーミング(捉え直し)するテクニック

アメのことをコミットメントでは利得フレーム、
ムチのことをコミットメントでは損失フレームといいます。

Lab Technician Using Pipette — Image by © moodboard/Corbis

【損失フレームの例】
療法Aを使うと、400人が死ぬ
療法Bを使うと、3分の1の確率で誰も死なず、3分の2の確率で600人全員が死ぬ

この場合、78%の人々がリスクの高い療法Bを選びます。
損失を過大評価し、避けるように行動するからです。

【利得フレームの例】
療法Aを使うと、200人が助かる
療法Bを使うと、3分の1の確率で600人が助かり、3分の2の確率で誰も助からない

この場合、28%の人々しかリスクの高い療法Bを選びません。
死ぬという損失フレームの概念を、助かるという利得フレームに変更するだけで人間の選択には大きな変化が現れるのです。

これを私達の使うコミットメントに応用すると、
健康になるというアメを強調するよりも、不健康になるというムチを強調するコミットメント設定のほうが人間には効くということです。

コミットメント設計のコツ③極端なアメや鞭を設定しない

目標を設定する経験が少なければ少ないほど、コミットメントのアメとムチを過大にしてしまう傾向にあります。

特にムチ。この設定を誤ると悲惨な結果となり逆に継続性が無くなってしまいます。

昔の大学時代の僕は、英語の勉強を一日8時間するとコミットし、8時間に満たなければ1日につき1,000円を友達に支払うというコミットメントをしました。

初日は張り切っていましたが、二日目になり怪しくなり、三日目からは案の定友達に1,000円払い続ける生活が始まりました。

一人暮らしをしていた大学生の僕にとって1,000円はかなり価値が高く、7日目にはコミットメントを撤回し、それと同時にやる気がなくなり英語の勉強も放棄してしまったのです。

当初の目標も達成できなければ本末転倒ですよね。そうならないために、3つの基準を設けることをおすすめします。

①コミットメントを設定するときが目標に対する気分が最も高まっている状態であることをしっかりと理解すること
⇒気分の高まりに乗じてあり得ないムチを設定しないでください

②「目標を達成するために最適な程度はどこか」観点で考えること
⇒アメ・ムチを設定することが目的化しているケースが非常に多いです。
アメ・ムチを設定することがゴールではなく、目標を達成することがゴールです。

③アメ・ムチの程度は自身にとって最適な程度に柔軟に調整していくこと
⇒アメ・ムチは最初から適切なものが設定できているとは考えないほうがよいです。
ゴールと自分の距離、進捗度合い・モチベーションの上下を判断しながら柔軟に調整することが重要です。

コミットメント設計のコツ④過度なコミットメントをしない(高すぎる目標を立てない)

過度なアメやムチを設定してしまうのと同じように、過度なコミットメントを設定しがちなので気をつけましょう。

前の例でいうと、全く英語の勉強をしてこなかった人にとって、急に毎日8時間勉強するという基準はあまりにも高すぎます。

多くても毎日4時間から始め、徐々にあげていったほうが結果的に継続につながりますし、
「原則毎日4時間。できなかった日も含め週21時間」といった風にコミットメントに柔軟性を持たせることも重要です。

毎日しっかりと目標を遂行できるわけではないですからね。達成できずやる気がなくなりやめてしまうよりかは、少しずつでも達成し継続しながら大きくしていくほうが目標達成率は上がります。

コミットメント設計のコツ⑤コミットメントは他人を巻き込み設定する

コミットメントはもちろん自分だけで完結できるものですが、目標達成の監視役として他の人に協力してもらうことには効果があります。

例えば、facebookなどのSNSで自分の目標を宣言することを想像してみてください。
「私は半年後までに体重を1キロ落とします」
こんな宣言をしたら、恥さらしになりたくないため、目標を何がなんでも達成しようと考えますよね。

このように他人を目標達成の監視役にすることは人間の羞恥心を刺激し非常に効果的です。

もちろんSNSなどで多くの人々に宣言することは協力ですが、あまり気の進まない人は、身の回りの人たちで探しましょう。
パートナーでも、友達でも、先生でも、自分がよくみられたい/達成できていない自分を見せたくないという人に目標を宣言するのです。

このときの人選びのこつは、すでに同じ目標を達成した人を選ぶことです。
例えば、禁煙したいのにヘビースモーカーに目標を宣言しては、励ましなどをしてくれなさそうなのは安易に想像できますよね?
ダイエットしたいのであれば、ダイエットが成功した人に目標を話しましょう。

コミットメント設計のコツ⑥自己モニタリングの仕組みを取り入れる

コミットメントで宣言される目標は、多くが以前まで失敗し続けてきた目標であるため、本人にとって途方もない目標であることが多いです。

だからこそ、ここからは継続してコミットメントを意識するコツについてお話していきます。

まず、最も重要なことが自己モニタリングです。
多くの人達が目標を達成できない大きな理由は、目標を意識して行動できないからです。
目標を立てるときはあんなにまで自分の人生に必ず必要だ!といった気持ちになるにも関わらず、忘れてしまうのですね。

だからこそ、自分で目標への進捗を確認することが大切です。

ダイエット方法の1つに、「測るだけダイエット」というものがありますが、あの仕組みも測り続けることによって人の潜在意識に体重を根付かせ、よりよい選択肢を選びやすい環境にしているのです。

なので、コミットメントを設計する際にも、①記録できる目標にすること②記録する仕組みを作ることが重要です。

コミットメント設計のコツ⑦目標を小分けにして達成感を味わい続ける

目標を忘れないために自己モニタリングの重要性について述べましたが、ただただモニタリングをするといってもなかなかモチベーションは上りません。

なので自己モニタリングのモチベーションをあげるために、2つのテクニックをご紹介します。

①目標を小分けにする

目標を細かく設定することで、小さなことでも達成感を味わう癖をつけていきましょう。
特に全く習慣のない目標などを設定する場合には、かなり強く意識する必要があります
僕の英語の勉強の例でいえば、「はじめは30分勉強する」だとか「TOEICの点数を25点上げる」などといった簡単なところから目標を設定していきましょう。

②体感のペースを増やし前進感を演出する

皆さんは飲食店のスタンプカードなどをお持ちですか?
「1回ランチに行くと1つスタンプがもらえて、10個貯めると500円引き」みたいなものです。

実はあのスタンプカードに少しの工夫を加えることで、通常の1.2倍くらいのペースでの来店を促すことが可能となります。

「ランチごとに2つスタンプがもらえて、20個貯めると500円引き」

お分かりになりましたか?
500円引きになるために行く回数は10回と変わりはないのですが、倍のペースで進むことで人間は目標に対して前進していると勘違いを起こし、従来より行く回数が増えるのです

コミットメントに応用すると、体重計を0.01キログラム単位で記載してみたり、自己モニタリングのグラフの単位・目盛りを2倍にしてみるなどのことができるでしょう。

コミットメントは気合ではなく技術

コミットメントを正しく設計し、必ず目標達成する7つのコツ

いかがでしたでしょうか?

みなさんも適切なコミットメントを設定し、自分の目標達成に役立ててみてください!

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