行動主義心理学の種類や例。嫌悪療法やフラッディング(内破療法)を学ぼう

こんにちは。寺谷です。

今回は心理学の行動療法について説明していきます。

私自身が専門とする認知行動療法の元ネタといってもいいでしょう。親子のような関係ですね。

行動主義心理学とは?行動は周りの環境から形成されるという考え方

心理学の行動主義の語源は、ラテン語である「タブラ・ラサ」といい、人は生まれたときには何にも染まっていない空白の石板であったという概念から、心理的障害は不適応学習の結果からくるものであり、また、その一連の症状は決して一つの根本的な原因から生じるものではないと想定されたことが始まりです。

行動主義とは、全ての行動が周りの環境から形成されるものであり、その症状は古典的条件づけオペラント条件づけによって学習されます。

古典的条件づけは何か関連のある繰り返される事態によって学習されるもので、その症状の多くは恐怖を感じたことが原因で学習されると言われています。

一方でオペラント条件づけとは、報酬などの強化刺激や罰などによって学習されるもので、よく摂食障害などの異常行動の説明として用いられます。

その結果、行動が学習されるということはつまり学ばずに得るということでもある、とされているのです。

行動主義心理学の療法は大まかに3種類

行動療法は古典的条件づけに基づいて行われます。これには間違った学習が異常な行動の原因と既に行われている、ということが前提です。したがって、本来の正された行動を学ぶ必要があります。

なかでもその重要な特徴は、現在の問題や行動に焦点を当て、さらにそれにより患者がやっかいだと感じる異常行動を取り除くという事に焦点を当てることです。

これは精神分析学(フロイドについて)とは全く対照的であり、異常行動の原因にもなっている解決されていない幼少期からの問題を明らかにすることにより焦点を当てています。

その行動療法には次のようなものがあります。

  • 系統的脱感作法
  • 嫌悪療法
  • フラッディング

古典的条件づけの理論は、繰り返し行われた即時的な関連性のある出来事ことによって、その反応が定着される、というものです。

これに基づいた行動療法は、その出来事の刺激と恐怖感といった望まない反応との関連性を打破することを目的としています。

嫌悪療法とは

嫌悪療法とは、患者の望ましくない行動に嫌悪的刺激を意図的に与える療法です。

例えば、酒屋に行き、大量のお酒を摂取するようなアルコール依存患者などに対しては、お酒を飲むことで何かしらの嫌悪刺激を意図的に発生させます。

その結果として、その患者は望ましくない行動と電気刺激の関連を自覚し、お酒を飲む=嫌悪刺激が発生するというリンクが形成されるのです

アルコール依存患者の場合、吐き気を誘発する薬を服用させ、その間に飲酒をさせることも多々あります。

そうすることにより、将来的にアルコールの匂い=嘔吐という関連性が形成され、飲みたいという欲を抑止知ることにつながるのです。

嫌悪療法は非常にシンプルな方法ですが、この嫌悪療法が同性愛者を「治療」するために使われている、ということが以前問題になったりしました(今でも中国など一部では現在進行系の問題です)

同性愛者を悪とみなし、同性の裸の姿をみたら電撃を流すというような非道な行為がつい1970年代は平気でおこなわれていたのですね。

今から50年前だと思うと恐ろしいですね。

嫌悪療法への批判的な意見

倫理的視点の他にもこの嫌悪療法の使用には2つの問題が考えられます。

まず、その刺激や嫌悪感をもたらす薬がどれほど効果をもたらすのかは不確かであるということです。

例えば視覚、嗅覚、お酒の味など以前に魅力に感じていた刺激を本当に嫌っている可能性もあれば、単に飲酒などのその行動を抑制および減らしているだけかもしれません。

二つ目に、この嫌悪療法には長期的効果があるのかはまだ不明とされています。

セラピー中はとてつもない効果をみせたとしてもその吐き気を誘発する薬が摂取されなければ一歩外に出るとその効果は全くなくなるということもあるため、それによる効果がないのは明らかであります。

また、再発の率は非常に高く、治療の成功はつまり患者がその刺激をどれだけ自主的に避けることができるかに委ねられているのです。

フラッディング(内破療法)とは

内破療法としても知られるフラッディングは、実際に患者を最悪の恐怖にさらしてしまうことで機能します。

例えば、閉所恐怖症の患者は4時間クローゼットの中に閉じ込められ、また飛行に恐れを抱いている患者は航空機に乗せられます。

このフラッディングの目的は、その恐怖の対象にわざと患者をさらし、実際は何も恐怖はないということを理解してもらうことです。

試験管の使用や仮想的な系統的脱感作法ではなく、フラッディングは現実での刺激を利用します。また、その恐怖とは決められた時間内で与えられることになっています。

実際に極度の不安を抱えた患者は最初パニック状態まで引き起こす可能性がありますが、最終的には疲労感が勝り、不安感レベルは下がり始めるのです。

もちろん、通常の人であればそのような状況を避けるためであれば何でもするくらいなのでしょうが、患者には今恐怖から立ち向かうことの他選択肢はもはやなく、パニック状態から抜け出したとき何も被害がなかったことが理解できるのです。

長時間に及ぶ恐怖への露呈は次第にその恐怖の対象と、不安から解放された時の感覚等のポジティブ何かが関連付けられていきます。

そしてそこで新たな関連性を生み出すのです。これにより逃亡や回避行動を通じての恐怖感情の増築を防ぐことができます。

フラッディングへの批判的な意見

フラッディングは、慎重に扱われなければ危険を伴うものであり、あまり頻繁には利用されません。

なぜならこれは全ての恐怖心を取り除けるものでもないのです。

ある患者にとってはこの療法の後に急激な恐怖を与えかねず、またその恐怖が次にいつ起こりうるかは予測不可能であるため非常に気を付けて行われる必要があります。

ウォルピ(1969年)によると、中にはこのフラッディングで不安が激化して入院した患者がいるということが報告されています。

また、一部の人々はその治療により誘発される強い不安感に耐えることが出来ず、リラックス状態に達する前に治療を終えてしまう恐れがあります。この治療を途中でやめるということはその恐怖を軽減させるのではなくむしろ増幅させてしまうのです。

しかし、水の恐怖を持っている患者にもこれは適用されることがあり、彼らは恐怖感があるにも関わらず水の中を泳ぐように指示されます。これはまたときに広場恐怖症と併せて利用されますが、一般的にフラッディングは系統的脱感作用のような結果をもたらすのです。

この方法の成功の裏付けとして、実際にその恐怖の事柄は実生活では避けられ、無害であるという発見もされないため消滅することはなく、その恐怖は変わらずに存在し続けるという仮説があります。

例えば、ウォルピは車に対する恐怖を抱えた少女を車の後ろに乗せて4時間連続して運転を続けました。すると彼女の恐怖は最高レベルまでに達しましたがその後減少し、最後には完全に消え去ったのです。

うまくいく例もありますが、中断すると逆効果であることが多いです。なかなか現代では取られにくい療法です。

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