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心理学者カール・ロジャーズ(1902年-1987年)について

カール・ロジャーズ
カール・ロジャーズ(1902年-1987年)は人道主義的な心理学者です。
アブラハム・マズローが唱える心理学の主要な部分には同意したものの、それに加え人が成長するためには真実性(開放性と自己開示)、受容性(無条件に物事を肯定的に捉えること)そして共感性(親身に聞かれて理解されること)という要素を提供する環境が必要だと提起した心理学者です。
これら真実性、受容性、共感性がない場合、日光があっても水無しでは成長しない樹木のようなもので、人間関係や健全な人格が本来のように発達することはないと考えました。
ロジャーズは人は皆人生における欲望、願い、そして目標は達成できると信じています。
そしてそれが達成された時、もしくはしたときに自己実現となるのです。
これはカール・ロジャーズの心理学における最も重要な貢献の一つであり、人はそれを達成するためのいくつかの要素を満たさなくてはならないと考えました。
自己実現
「この生命体には、経験の実現、維持、そして向上させるための基本的な傾向と努力というものがあります。
(1951年 ロジャーズ 487ページ)」
彼は、精神分析や行動主義の両方の決定的性質を否定し、人は様々な状況を知覚するために自然と行動するものであるとしています。
「自分がどのように知覚しているか知ることができるのは他の誰でもない自分のみなのです。
したがって自分にとっての最高の専門家は自分自身であります。」
カール・ロジャーズ(1959年)は、人間は滞在的可能性が備わっていて、それが自己実現への傾向である、としています。
つまり、その潜在的な可能性・能力を最大限に発揮し、最高レベルの人間性を達成しようと試みることが自己実現だとしているのです。
条件が正しければその力を最大限に引き出し成長することができ、周りの環境によって変化し、時にはその潜在能力を制欲する花のように、人も周りの環境が十分に満たされたものであれば潜在能力に達することができます。
しかし、花とは異なり人の潜在能力とは大変興味深いもので、それぞれの性格に応じて成長するようにつくられています。
ロジャーズは、人はそのように成長し実現の可能性を追うということは人そのものの性質であり本能的な良さであると信じていました。
さらに人は、乏しい自己概念や外部束縛に縛られた時にのみありのままの自分でいることが難しくなり、破滅的になります。
ロジャーズは、人が自己実現を達成するためには統合された状態になくてはならないとしています。
というのも、自己実現とは「理想の自己像(なりたい自己像)」が実際の行動(現実自己)と一致するときに起こるものです。
ロジャーズは自己実現をしている人とは、潜在能力を最大限に機能させたものとみなしています。
私たちが自己実現できるかどうかという主な決定要因は、実は幼少期の経験にさかのぼりると考えていました。
潜在能力を最大限に機能させるために必要な5つのこと

ロジャーズは、すべての人は目標が達成できると信じていました。
というのも、その人は今もここで主観的な経験や気持ちを継続的に変化させながら成長しているとしているからです。
いろいろな意味で、彼は最大限に潜在能力を機能させている人を理想的な人、そして最終的な達成目的とみなしていましたが、これを人生の最終地点とするのではなく、あくまでも変化と実現のための課程であるとしていました。
ロジャーズは、最大限に潜在能力を機能する人の特徴を5つ挙げています。
- 経験を受け入れる:肯定的な感情も否定的な感情も受け入れます。否定的な感情を否定することはせずにうまく受け入れます。(自己中心的な防御メカニズムには頼らない。)
- 実存的な生活:生活の中で起こる様々な経験に触れながらも、先入観はなるべく取り除きます。過去や未来を見ながら生きるのではなく、現在の生活今この瞬間を生きることで感謝が生まれます。
- 感情を大切にする:感情、直観、本能を信じましょう。決断できるということは権利であり、正しい選択をするために自分を信じるべきです。
- 創造性:創造性のある思考やリスクのあることができるのも人間の特徴です。常に安全な道を選ぶというわけでは決してありません。これには変化に対応しながらかつ新しい経験を求めるという事が含まれているのです。
- 充実した人生:幸せで人生に満足している人は常に新たな挑戦や経験を探しています。
ロジャーズにとって、最大限に機能できる人とは変化にうまく適応でき、バランスを取れて「知る」ということに興味を持つ人です。
このような人は社会の中でもよく高く位置付けられます。
評論家は、最大限に機能する人は、西洋文化の産物である、と主張しています。東洋文化などの他の文化では、1人の成果よりもグループでの成果がより高く評価される傾向にあるのです。
人格形成
ロジャーズの人格理論の中心にあるものは、自己、または自己概念の概念です。
自己概念は、「組織化された自分自身についての一貫された知覚と信念」と定義されています。
自己とは、人間として自分が本来なにものであるかを示すために作られた人間的な言葉です。
自己は私たちの内面にある人格であり、これは魂やフロイドの精神に共通するものがあります。自己は生活のなかでの経験やそれらの経験から生まれた考えや解釈から影響を受けます。
その中でも自己概念に影響をもたらす二つの主な要因は幼少期の経験と他人からの評価です。
ロジャーズ(1959年)によると、私たちはみな自分が理想とし、イメージするような形で感じ、経験し、そして行動したいと感じ、意識しています。
自己のイメージと理想が近づけば近づくほど、私たちはより自己価値を高めることになります。
したがって自己の経験が受け入れられることなしに現実自己が否定されると、人は不統合状態になります。
自分はユニークな概念で構成されている、とすることが人道主義的アプローチであるとされていますが、自己概念には次の3つが含まれます。
自己価値
自己概念(または自尊心)は、自分自身についてどう考えるか、によって構成されています。
ロジャーズによると、自己価値の感情は幼少期に発達し、母親と父親両方と子供のやりとりの間で形成されると考えてられています。
自己イメージ
自分が自分自身をどのように考えるか、見つめるか、というのは身体における健康においてもとても重要なポイントです。体のイメージが内部の人格に影響を及ぼすこともあります。
例えば、自分自身をいいひと、悪いひと、もしくは美しい、醜いとしたとき、このような自己イメージはその人自身の考え方、感情、そして行動にも影響するのです。
理想像
理想像とはなりたい自分のことです。これは目標や人生における野望から成り立っており、永遠に変化し続ける原動力ともいえるでしょう。
幼少期の英想像が必ずしも十代や二十代後半における理想像であるとは限りません。
肯定的関心と自己価値

カール・ロジャーズ(1951年)によると子供は、他人からの肯定的関心と自己価値という二つの基本的なニーズを持っているとしています。
自分についてや、自己価値について考えることは、身体的健康はもちろん人生における目標と野望と自己実現を達成することにおいて重要な基礎となっています。
自己価値は、非常に高いものから非常に低いものの連続であるとされていますが、カール・ロジャーズ(1959年)にとって、自己価値が高い、つまり自分に自信があり、自分について肯定的な感情をもつ人とは、なにか困難に直面したとき、その失敗や不幸を受け入れて、さらに他人に対しても開放的になれる人です。
一方で自己価値が低い人は、人生においてあらゆる困難を避け、人生には苦しみや不幸があるということを認めずに他人からも保守的であるとしています。
ロジャーズは、自己価値とは幼少期に発達するもので、母親と父親とのやり取りの間で形成されると考えていました。成長するにつれて、特に重要な人との交流は自己価値の感情に影響をもたらすのです。
さらにロジャーズは、他人からも肯定的にみなされるべき、つまり私たちは価値を感じ、尊重され、愛情をもって扱われるべきだと確信しています。
肯定的な他人からの関心は、他人が社会の中でどのよう自分を評価し、判断しているのか、ということによって成されますが、そこでロジャーズは、無条件の肯定的関心と条件付きの肯定的関心を区別しました。
無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心は、親、そして他にも重要な人から愛され、受け入れられる状態です。肯定的関心は人が何か間違ったことをしたり犯した場合に取り消されるものではありません。
無条件の肯定的関心は、時にはミスを犯したとしても、それを悪化させる可能性があったとしても何事にも挑戦できる自由があるのです。
自己実現ができる人は、他人から、特に幼少期に両親より無条件な肯定的関心を受けることが多くあります。
条件付きの肯定的関心
条件付きの肯定的関心とは、例えば、親が正しいと思うであろう行動をとるように、肯定的な評価、称賛、または承認が子供に委託されているという状況です。
したがって、子供が自分自身のためというわけではなく、親から承認を受ける方法でのみ行動するのです。
極端に言えば、今でも他人から常に承認を求める人は、子供のころに条件付き肯定的関心を経験した人であるともいえます。
子供のころ、親が喜ぶような行動をしようと考え行動していた方もいるでしょう。それは親からの無条件の肯定的関心ではなく、親の思う範囲の中での正解があり、範囲内であれば肯定的関心が得られるという条件付きの肯定的関心と考えることができます。
自己一致
人が持つ理想像は、実際に人生で起こったこととその人の経験が必ずしも一致するものではありません。
したがって、その差は理想像と実際の経験の間に生まれ、これ不統合といいます。
理想像と実際の経験が一貫しているもしくは非常によく似ているときに統合状態となりますが、もしそうであったとしても、全ての人はある一定不統合も同じく経験しているはずです。
自己一致は、無条件の肯定的関心によって成長します。ロジャーズは、自己実現を実現する人は必ず統合の状態にあると確信しているのです。
ロジャーズ(1959年)は、私たちはみな自分が理想とし、イメージするような形で感じ、経験し、そして行動することを願っているとしています。
自己のイメージが理想へ近づけば近づくほど、私たちはより自己価値を高めるのです。
自己の経験が受け入れられることなしに自己のイメージが否定されると、人は不統合状態になります。
つまり、不統合とは、「実際の経験と自己像の不一致」です。
人々は、自分を自己像と一致させるように物事を考えがちであるため、不統合を否認し、なんらかの防衛メカニズムの使用や望まないものからの脅威が少なくなるようになにかを拒否することがあります。
自己像が真の感情や経験と不統合であるという真実を知ることは、自分を傷つけることでもあるため、自分自身の防衛するのです。
不統合状態を避けるための防衛反応により、人はのびのびとありのままで行動できなくなっていくのです。
カール・ロジャーズの名言
「世界を見ると私は悲観的であるが、人を見ると楽観的になれるのです。」
(ロジャーズ, 1961年)
「創造性において欠かせないのは物珍しさであり、したがってそれを判断する基準というものは存在しない。」(ロジャーズ, 1961年)
「私は良い人生について徐々にある否定的な結果にたどり着いた。
良い人生とは安定されたものではなく、人生とは美徳、満足感、涅槃、または幸福という状態ではないのです。
これは個人が調整され、充実され、または実現されるというものではなく、心理学的用語を使用するのであれば、動因低減説、または緊張低減や恒常性という状態であるといえるでしょう。」(ロジャーズ, 1967年,)
「良い人生は落ち着いた状態にあるのではなく、常に経過地点であり、つまり最終地点ではなく、あくまでも導く方向ということです。」(ロジャーズ, 1967年)